バルヴェニー蒸留所は、スコットランドの北東に位置するスペイサイド地方のダフタウンにある。この町は、7つの蒸留所が集まるウイスキーの町としても知られる。バルヴェニーとはゲール語で『山の麓の集落』という意味で、近郊の13世紀からあるバルヴェニー城という古城（現在は廃墟）がその由来である。この古城は長い間放置されていたが、ウィリアム・グラントがその麓の跡地を購入し、まずグレンフィディック蒸留所を開設した。

バルヴェニー蒸留所の創業はその5年後の1892年。グレンフィディックに隣接するバルヴェーハウスという領主の館を買い取って取り急ぎ蒸留所に改造した。グレンフィディックに続く第2の蒸留所で、同じ敷地内に建っている。

グレンフィディックのスチルはカードゥの中古だったが、バルヴェニーもグレンアルビンとラガヴーリンの中古のものを購入し設置した。それがバルヴェニー蒸留所の始まりだった。

■バルヴェニー蒸留所

蒸留所は隣接していて酵母も大麦も同じだが、水源は異なり、バルヴェニー蒸留所ではやや硬度の高いコンヴァルヒルの泉の湧水を引き使用している。この異なる水源と独自の製造の違いにより、2つの蒸留所では全く異なる性質のモルトウイスキーを生み出している。バルヴェニーは重厚でリッチとするならば、グレンフィディックは軽くてフレッシュ、滑らかで蜂蜜のような風味のを持ったモルトである。

バルヴェニー蒸留所では、現在でも全大麦使用量の15％ほどを自家栽培の大麦でまかない、フロアモルティングしたライトピーテッドの麦芽を使っている数少ない蒸留所の一つ。ワンバッチの仕込みは麦芽11.8ｔ。ピートはトミントール産のものを使い、最初の12時間のみ焚く。それ以外は44時間無煙炭を焚き乾燥させている。

発酵槽はオレゴンパイン製が9基、ステンレス製5基の計14基。 2回蒸留で、ボール型のスチルは、初溜5基と再溜6基の計11基。容量は9,000～13,000リットルまでと様々である。年間生産能力も700万リットルで、スペイサイドの中でも大きい。

熟成には、伝統的なダンネージ式の熟成庫を使用。熟成樽はバーボン樽主体に、シェリー樽、ラム樽、ワイン樽など膨大な数と種類の樽を使用している。このことにより、滑らかで蜂蜜のような甘みと、シェリーのスパイシーな香りが特徴的なモルトとなり、バルヴェニー蒸留所のウイスキーに独特の風味と個性を与えている。