ダルモア12年

The Dalmore 12 Years Old

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バーボンとシェリーの絶妙なハーモニー

『ダルモア12年』は、12年以上熟成させた原酒(バーボン樽85%・シェリー樽15%)をヴァッティングさせたダルモアのスタンダードボトル。ボトルにひときわ大きく記される牡鹿の紋章が印象的。これは1263年、手負いの牡鹿に急襲されたスコットランド王・アレクサンダー三世を、クラン・マッケンジー(ハイランドに起源をもつ歴史ある氏族)の勇者が救ったことから、一族の勇気を称え贈られたものといわれている。以来マッケンジー家は雄鹿の紋章を使うことが許されたといわれる。

バーボン樽由来のバニラのような甘さと、シェリー樽由来の柑橘類のようなフルーティーな風味が特徴的。 ほのかなシナモンやナツメグのようなスパイシーさも感じられる。甘さ、コク、香りのバランスが良く口当たりも良いので、初心者にもオススメの逸品。 まずはストレートで。少量の加水で、香りが開き華やかさが引き立つ。


 

・ダルモア蒸留所のこと

スコットランド北部、ハイランドの中心都市インバネスから幹線道A9を北上すると、クロマティー湾の先の沿岸にアルネスという町がある。ダルモア蒸留所は、そのアルネスの町を通過した郊外の、クロマティー湾とブラックアイル半島を望む浜辺に建てられている。

ダルモア蒸留所

アルネスは自然に満ちた美しい場所で、また大麦の大生産地帯でもある。古くから鹿狩りが盛んで、その歴史を背景にダルモアのボトルには鹿の紋章が施されている。「ダルモア」とはゲール語で、「広大な草原」とか「広大な湿地」を意味する「Dail Mòr」に由来している。

ダルモア蒸留所は、ジャーディン&マセソン商会の共同経営者、アレクサンダー・マセソンによって1839年に創設された。1950年に、一旦蒸留所はサンダーランド家のリース所有となるが、1867年、地元で農家を営むマッケンジー3兄弟が運営するマッケンジー・ブラザーズ社のリース所有となった。その後長きにわたって運営されることとなる。1886年には、創業者のアレクサンダーが亡くなり、1891年に蒸留所はマッケンジー・ブラザーズ社に14,500ポンドで売却される。

マッケンジー3兄弟は、ホワイト&マッカイ社の創始者ジェームズ・ホワイトとチャールズ・マッカイの共通の友人だった。そんな関係もあって、この頃からダルモアのモルトは、ブレンデッド・ウイスキー「ホワイト&マッカイ」のキーモルトとなる。

しかし蒸留所は、1914年から始まった第一次世界大戦により連合軍に接収されてしまう。 Uボート(ドイツ海軍が保有する潜水艦の総称で、U-BootまたはUnterseebootの略称)からの攻撃を防ぐため、北海を封鎖する必要に迫られたからだ。そのための機雷を急遽アメリカから輸入。その最終組み立てが熟成庫を利用して行われた(インバネスのグレンアルビン蒸留所も使われた)。ダルモア蒸留所が選ばれたのは、良港があって北海にも近かったというのがその理由だった。第一次世界大戦は1918年に終わり、1920年に蒸留所はマッケンジー家に戻されたが、戦禍によるダメージは激しく操業再開までには2年以上の歳月を要した。

1960年には、マッケンジー・ブラザース社はホワイト&マッカイ社と合併し、さらに1966年にはスチルが2基増えて8基体制となる。2007年、ユナイテッド・スピリッツ社(インドのユナイテッド・ブリュワリーズ社の子会社)がホワイト&マッカイ社を買収。さらに2014年にフィリピンに本拠を置く、エンペラドール・ディスティラーズ社がホワイト&マッカイ社を買収し、ダルモア蒸留所所の所有権を獲得する。そして、2022年には蒸留所が改装工事のために閉鎖され、2024年にリニューアルオープンの予定となっている。

ポットスチル

ダルモア蒸留所の現在の仕込みは、ワンバッチ麦芽10.4トン。ダルモア蒸留所では創業から1956年まで伝統的なフロアモルティングを、その後1986年までサラディンボックスによる自家製麦を行っていた。サラディンボックスとは、網目状の床を持つ箱形スペースに大麦を敷き詰め、床下から空気を送り込むことで発芽を促進させる方法である。しかし、現在は経済的理由から、近隣のモルトスター(専門の製麦業者)から仕入れたノンピート麦芽を使っている(ピーテッド麦芽は、2011年にブレンデッド用の原酒を造って以降使われていない)。

マッシュタン(糖化槽)は、ステンレス製のセミロイタータン。仕込み水は、ハイランド中心部にあるモリー湖を水源とする、蒸留所のそばを流れるアルネス川の水が使われている。ウォッシュバック(発酵槽)はオレゴンパイン製が8基で、発酵時間は一般的な50時間に統一されている。使用する酵母は、マウリ社製のリキッドイースト(液状酵母)を使用。

ポットスチルは、1966年に4基増設されたが、狭いスチルハウスに8基の(初×4、再溜×4)のポットスチルが並んでいる。加熱方式は蒸気による間接加熱方式で、コンデンサーはシェル&チューブ方式。その景色は壮観だが、形状はとてもユニーク。ウオッシュスチル(初溜釜)はランタンヘッド型に通常のスワンネックではなく、フラットトップのT字シェイプ。さらにスピリッツスチル(再溜釜)にはネックの部分に、チューリップ型の銅製ウォータージャケットが取り付けられている。アルコール蒸気を直接冷却し、雑味や不純物を取り除き、重くオイリーな成分がより還流されるようになっている。

熟成に使われるのは、アメリカンオークのバーボン樽とヨーロピアンオークのシェリー樽が主だが、マディラやワイン樽なども一部使われている。ウエアハウス(熟成庫)には、伝統的なダンネージ式が4棟と、ラック式が5棟の計9棟。 貯蔵容量は約65,000樽とされている。

Data

所有者:ホワイト&マッカイ社

所在地:Alness,Ross-shire

URL:https://www.thedalmore.com/

創業年:1839年

蒸留器:ランタンネック型(初×4、再×4)

アルコール度数:43度

容量:750ml

 

 

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