モートラック12年

Mortlach 12 Years Old

whisky-mortlach

ダフタウンの野獣と呼ばれる複雑で重厚な味わい

『モートラック12年』は、2019年3月のリニューアルから発売された新しいラインナップ。スモーキーさはないものの、「ダフタウンの野獣」と呼ばれるモートラックの圧倒的な力強さを備えたスタンダードボトル。熟成にはヨーロピアンオーク樽とアメリカンオーク樽を使用。アルコール度数は伝統的な43.4%に調整されており、モートラックの特徴である甘くスパイシーな味わいを持つ。最初に感じられるのはカカオとカスタードクリームの優しい甘みで、中盤にはチェリー、ブラウンシュガーの風味も。力強さだけでなく、モルティな甘味が強く、満足感のある味わい。スパイシーで、中盤からショウガの風味が広がり、ミーティー(肉をローストしたような旨み)さも感じられる。

飲み方としては、モートラックの特徴を知るためにまずはストレートで。ただし、アルコール特有の辛みが強いので、チェイサーを用意したいところ。ロックにすると、渋みや石鹸のような香りが強まり、ハイボールや水割りにするとブドウやリンゴのような果実香が広がる。


・モートラック蒸溜所のこと

スペイサイドは、ウイスキー造りに適した土地として知られている。大麦の生産地であり、燃料となる泥炭(ピート)が豊富で年間を通して気温の変動が少ないため、ウイスキーの熟成に最適な環境が整っている。そのスペイサイドの中心地であるダフタウンには、6つの蒸留所が存在する。グレンフィディックやバルヴェニーといった大規模な蒸留所があり、その中で最も古いのがモートラック蒸留所である。

 

whisky-mortlach

モートラック蒸留所

ダフタウンは、ナポレオン戦争の帰還兵や近隣の農家の就業支援のために計画的に造られた町で、「世界のウイスキーの首都」とも呼ばれている。モートラックは、第二次世界大戦中に操業を許可された唯一の蒸留所であり、またグレンフィディックの創業者ウイリアム・グラントが、20年間働いた蒸留所でもある。モートラック蒸留所はダラン川とフィディック川が合流する地点に位置している。ここは西暦1010年に、スコットランド王マルコム2世がデーン人と戦った有名な古戦場でもあり、元々この辺りでは古くからウイスキーの密造が行われていた。

「モートラック」という名前はモートラック教区教会に由来し、ゲール語で「椀状の窪地」という意味である。密造者たちは、教会の敷地内にあるハイランド・ジョンの泉の水を利用してウイスキーを造っていた。現在、モートラック蒸留所ではコンバルヒルの丘の上にあるジョックス・ウェルの泉から仕込水を引いている。

モートラック蒸留所の歴史は、1823年にジェームズ・フィンドレーターをはじめとする地元の3人の農夫がライセンスを取得し、マクダフ伯爵の領地を借りて共同で設立したことから始まる。しかし、翌年にはフィンドレーターが蒸留所を離れ、蒸留所はドナルド・マッキントッシュとアレックス・ゴードンに引き継がれた。1831年には、ジョン・ロバートソンにより270ポンドという破格の価格で買収され、翌年にはA&Tグレゴリー社によって買収された。1837年には、蒸留所の所有権の一部がグラント兄弟によって購入され、以降蒸留所の設備は兄弟が所有するグレングラント蒸留所で使用されるようになった。そして、1842年には蒸留所の所有権が完全にグラント兄弟に移行された。

1853年には、鉄道の測量士だったジョージ・コーウィーが蒸留所の所有権の一部を買収し、1867年には蒸留所の所有権を完全に引き継ぐこととなる。その後、ジョージはインフラを整え、40年以上に渡りモートラックの基礎を築いた。創業以来、所有者が何度も変わり、幾度もの共同所有や買収、生産と休止が繰り返されてきたが、これ以降所運営が安定することになる。 1895年には、蒸留所の運営がジョージの息子であるアレクサンダー・コーウィーに任され、1897年にはポットスチルが3基から6基に増設。当時ではハイランド地方最大の蒸留所になった。現在も行われている「2.81回蒸留」は、アレクサンダーによって導入されたものだ。アレクサンダーはヴィクトリア期を代表する技術者・科学者で、数々の改革をモートラック蒸留所にもたらした。 1923年にアレクサンダー・コーウィーが引退した後、ジョン・ウォーカー&サンズ社がオーナーとなり、ジョニーウォーカーのキーモルトとなった。そして、1925年にはディスティラーズ・カンパニー(DCL社)による買収によりその傘下となる。

1964年、蒸留所は大規模な改修工事を行い、すべてのポットスチルを新しいものに交換した。そして、1971年にはポットスチルの加熱方式が直接加熱から蒸気加熱に変更される。1980年代には、ジョニーウォーカーから12年物のモートラック12年がリリースされる。 1986年にDCL社がギネス社の傘下に入り、1998年にはギネスが合併してディアジオ社となり、現在に至るまでその傘下となってる。1990年代には「花と動物シリーズ」の16年物が販売されたが、シングルモルトとしての販売はわずかだった。1996年には、150万ポンドをかけた大改修が行われた。現在モートラック蒸留所の仕込みは、ワンバッチあたり12トンの麦芽を使用。蒸留所でのモルティングは、1968年を最後に行われなくなり現在はスペイサイドの専門製麦業者(モルトスター)からノンピート麦芽を調達している。

マッシュタン(糖化槽)はステンレス製のフルロイタータン。麦芽の粉砕には伝統的なポルテウス社製のモルトミルを使用しており、他の蒸留所と比較して粗く挽かれている。 ウォッシュバック(発酵槽)はオレゴンパイン製で、容量54000リットルのものが6基。発酵時間は50~60時間と一般的な48時間よりもわずかに長く、このため力強くスパイシーなもろみとなる。 モートラック蒸留所のウイスキー造りの最大の特徴は、独特な「2.81回蒸留」にある。これは、2回蒸留の原酒と3回蒸留のものを混ぜ合わせ、結果的に「2.81回蒸留」といわれる非常に複雑な工程を経て造られる。

 

2.81回蒸留について

モートラック蒸留所の2.81回蒸留について、その独特で複雑な工程をご紹介します。

この工程は非常にユニークで、「ウイスキー職人でも理解するのに半年はかかる」と言われています。

そのため、本文の流れに含めると混乱してしまう可能性があるため、ここで別途紹介します。

モートラック蒸留所には、ポットスチルが計6基あります。

whisky-mortlach

モートラック蒸留所のポットスチル

その内訳は、

・初留器①×1基(容量:17,500リットル)

・初留器②③×2基(同:各7,500リットル)

再留器①×1基(同:9,000リットル)

再留器②×1基(同:8,500リットル)

再留器③×1基(同:8,000リットル “Wee Witch”「小さな魔女」と呼ばれる。)

となります。

蒸留器の形状は全てバルジ型ですが、サイズや細部の形状はすべて違っていて、これらを使い分けることで、3種類の異なるタイプの原酒を造り分けています。

whisky-mortlach

2.81回蒸留工程図

まず初留器①と再留釜①は、2回蒸留でニューポットが造られ、通常のウイスキーと変わりません。

ここからが複雑になります。初留器②と初留器③で蒸留した原酒を「ヘッド」3種類と、アルコール度数の低い「テール」2種類の計5種類のローワインに分けます。アルコール度数の高いヘッド部分のうち、半分のヘッド①は、そのまま再留釜②へと送られ蒸留され、アルコール度数が高く華やかな味わいのニューポットとなります。

一方、テール①は再留器③(Wee Witch)で蒸留され、低アルコールで重厚、香味豊かなフェインツとなり、フェインツ①とフェインツ②に分けて送られます。フェインツ①はヘッド②と混ぜて蒸留し、フェインツ③となります。フェインツ②もテール②と混ぜ合わせて蒸留し、フェインツ④となります。

フェインツ③とヘッド③を混ぜて3回目の蒸留を行い、フェインツ⑤となります。最終的にフェインツ④とフェインツ⑤を混ぜ、さらに再留器①②で出来た原酒を混ぜ合わせることで、重厚かつオイリーで香味成分をたっぷり含んだ複雑なニューポットとなります。これがモートラック蒸留所の、「2.81回」蒸留の工程となります。

 

この工程を経ることにより、「ダフタウンの野獣」といわれるリッチで複雑、重厚でミーティ(肉っぽい)なフレーバーに溢れたモルトを生み出しています。 冷却装置には伝統的なワームタブを採用しており、冷水のタンク(タブ)に、コイルのようにぐるぐると細長いパイプ(ワーム)を通してその中に蒸気を送り、ゆっくりと冷却する仕組みです。冷却水にはダラン川の水を使用し、この効果も相まって独特の味わいが生まれるといわれています。

熟成には、ダンネージ式の熟成庫(ウェアハウス)が5つあり、土の床を持つウェアハウスで樽が眠っています。熟成にはシェリー樽が主に使用されていましたが、近年ではアメリカンホワイトオークのリフィルバーボン樽も使用されています。

年間生産能力は380万リットル。かつてはほとんどボトルがリリースされていなかったが、2014年からオフィシャル物が相次いでリリース。現在は12年、16年、20年の3本が定番商品としてラインナップされています。

 

Data

所有者:ディアジオ社

所在地:Dufftown,Moray

URL:https://www.malts.com/en-row/brands/mortlach

創業年:1823年

蒸留器:バルジ型(初×3基、再×3基)

アルコール度数:43.4度

容量:700ml

 

 

【広告】楽天/ウイスキー通販

 

【広告】Amazon/ウイスキー通販

 

・ご指定以外の商品も表示されます。

・お酒は二十歳になってから。