「壱岐焼酎協業組合」は、麦焼酎発祥の地として知られる長崎県壱岐島において、地域の焼酎文化を守り育てるために設立された組織です。壱岐島は古くから大陸文化の中継地として栄え、16世紀頃にはすでに麦焼酎の製造が始まっていたとされます。藩政時代には平戸藩の支配下にあり、豊かな土地で育まれた麦を年貢として納めることが奨励されたことから、麦を原料とした焼酎造りが盛んになりました。壱岐島の人々は清酒よりも安価で手に入りやすい麦焼酎を日常的に飲んでいたこともあり、焼酎文化が深く根付いていったのです。

「壱岐焼酎協業組合」は、こうした歴史的背景を受け継ぎながら、現在では島内の七つの酒造メーカーが加盟し、技術を競い合いながら壱岐焼酎の品質向上と普及に努めています。1995年には、壱岐焼酎がWTO（世界貿易機関）によって地理的表示（GI）に認定（※）され、世界的にもその製法と品質が保護されるようになりました。これは、スコッチウイスキーやコニャックなどと同様に、壱岐焼酎が特定の地域で伝統的な方法で造られていることを証明するものです。

壱岐焼酎の製造には、独自のこだわりがあります。主原料には国産の二条大麦を使用し、麹には米麹を用いるのが特徴です。これは大分県などの麦焼酎が麦麹を使うのとは対照的で、壱岐焼酎ならではの甘みと厚みのある味わいを生み出します。また、蒸留には常圧蒸留を採用しており、麦の香ばしさやコクをしっかりと引き出すことができます。仕込みには壱岐島の地下水を使用し、発酵から蒸留、貯蔵、瓶詰めまでをすべて島内で行うという厳格なルールが設けられているのも、地理的表示の条件のひとつです。

「壱岐焼酎協業組合」は、こうした伝統的な製法を守りながらも、現代の嗜好に合わせた商品開発にも積極的に取り組んでいます。観光やイベントを通じて壱岐焼酎の魅力を発信し、国内外のファンを増やす努力を続けています。壱岐焼酎の日（7月1日）を制定するなど、地域と焼酎の絆を深める活動も展開しており、壱岐島の文化と誇りを体現する存在として、今後も注目される組織です。