「株式会社霧島町蒸留所」は、1911年（明治44年）に鹿児島県霧島市で創業した、百年以上の歴史を持つ本格焼酎の蔵元です。かつては「さつま霧島酒造」という社名でしたが、平成の市町村合併により消滅した「霧島町」の名を残したいという想いから、現在の社名に改められました。これは、地域に根ざした酒造りを続けるという蔵元の強い信念の表れでもあります。

蔵が位置する霧島市は、霧島連山と清流・霧島川に囲まれた自然豊かな土地で、日本で最初に国立公園に指定された霧島の麓にあります。この恵まれた環境の中で、「霧島町蒸留所」は創業当時から受け継がれてきた伝統的な焼酎造りを守り続けています。特に注目すべきは、100年以上前の日本製の和がめ（かめ壺）を使った仕込み（※）です。現在も蔵には54本のかめ壺があり、ひとつとして同じ形のものはなく、それぞれが職人の手仕事による唯一無二の道具です。

焼酎造りにおいては、鹿児島県産のさつま芋「黄金千貫」と国産米麹を使用し、霧島山系の天然水で仕込むことで、素材の持つ力を最大限に引き出しています。蒸留には単式蒸留機（常圧蒸留）を用い、芋の香りと旨みをしっかりと残した本格焼酎に仕上げています。代表銘柄「明るい農村」は、白麹と黒麹で仕込んだ原酒をブレンドすることで、まろやかさとコク、すっきりとした後味を両立させたバランスの良い味わいが特徴です。

また、「霧島町蒸留所」は品質管理にも力を入れており、2013年には国際品質規格ISO9001を取得。さらに、鹿児島県本格焼酎鑑評会では12年連続で入賞するなど、その技術力と品質の高さは広く認められています。

蔵元の理念には「よき焼酎は、よき土から生まれる。よき土は、明るい農村にあり」という言葉が掲げられており、焼酎造りを通じて地域の農業や文化を守り、育てていく姿勢が感じられます。小さな蔵ながらも、自然と人の営みに寄り添いながら、唯一無二の焼酎を生み出す「霧島町蒸留所」は、まさに“日本一美しい蔵”を目指すにふさわしい存在です。