1846年に、かつて13～15世紀までスコットランド王国の首都だったパースに、ワイン＆スピリッツ商の「ジョン・デュワー＆サンズ社」として設立された。創業者のジョン・デュワーはパースの農家に生まれ、小さなワイン＆スピリッツの製造会社で17年間勤務した後、40歳で独立しました。ジョン・デュワーは、「デュワーズ」の原型となるブレンデッドウイスキーを作った他、当時量り売りだったウイスキーを初めてガラス製ボトルに詰めて販売したことでも知られている。

ジョン・デュワー＆サンズ社

ジョン・デュワーが亡くなると、息子のジョン・アレクサンダー（当時26歳）とトーマス（同16歳）が会社を引き継ぎ、世界的なウイスキーブランドへと育て上げました。特に次男のトーマス（通称トミー）の営業力は群を抜いていました。元来饒舌で社交的、ジョーク好きなその性格は販売戦略に大いに活かされ、数々の逸話を残しています。一方、兄のアレクサンダーは寡黙な人で、ウイスキー製造に専心し、後に自由党の国会議員も務めた人物でした（トーマスも後年政治に興味を持ち、兄とは逆に保守党の国会議員となった）。

ジョン・デュワー＆サンズ社は、その名を知らしめるべくロンドンに進出。そこでトーマスは20代前半という若さながら、奇抜な発想力と疲れを知らない行動力でデュワーズの売り込みをかけました。例えば、ロンドン万博に突然キルト姿のバグパイパーが登場し演奏して人々を驚かせたり、世界初といわれる飲料の映画広告や派手なネオンの看板を立てたりと、才気溢れるプロモーションが評判を呼びました。5年と経たないうちに、ロンドン中のホテルやバーにデュワーズを売り込むことに成功。トーマスは33歳で、伝統あるロンドンシティの執政官という地位まで上り詰め、後には貴族に叙せられています。トミーの言動は「デュワリズム」と称され、日々新聞やゴシップ誌などに取り上げられたりもしました。「デュワーズ」は、1886年のエジンバラ国際博覧会では初めてメダルを獲得し、これまでに1000を超える受賞歴を誇っています。

1891年、ジョン・デュワー＆サンズ社に一通の手紙が届きました。その差出人はスコットランド出身の「鉄鋼王」アンドリュー・カーネギーでした。手紙の内容は、当時の米大統領ベンジャミン・ハリソンに「デュワーズ」を樽ごと届けて欲しいというもので、大きな話題を呼びました。この出来事がジョン・デュワー＆サンズ社のアメリカ進出の大きなきっかけとなり、デュワーズは1890年代にアメリカ市場を席捲し現在に至るまで圧倒的な人気を誇っています。さらに、1893年にはヴィクトリア女王より英国王室御用達を受け賜わる栄誉を受け、その名声は今でも続いています。

1896年には、自社ブレンドのためアバフェルディ蒸溜所を建設。その3年後の1899年には、現在までデュワーズの代名詞ともいえる『デュワーズ　ホワイトラベル』が誕生。「ホワイトラベル」は、禁酒法（1920～33年施行）解禁後のアメリカで爆発的な人気を得て、同社のビッグブランドとなりました。さらに、1915年にはライバル会社だったジェームズブキャナン社と合併、その10年後にはDCL社の傘下となりました。その後、1998年に世界最大のラム酒ブランドの販売会社であるバカルディ社がデュワーズを買収し、現在まで同社の系列となっています 。

デュワーズの主要モルトはアバフェルディ（ハイランド）、クライゲラキ（スペイサイド）、オルトモア（スペイサイド）、ロイヤルブラックラ（ハイランド）、ザ・デヴェロン（スペイサイド）。これらのモルトはクセがなくフルーティで飲みやすく、スパイシーでマイルドな味わいが絶大な人気を誇っています。デュワーズのブレンディングは、メインがアバフェルディ、次がオルトモア、ロイヤルブラックラ、クライゲラヒで、マクダフは少量のブレンドとなっています。