「研醸株式会社」は、1983年（昭和58年）に福岡県三井郡大刀洗町で創業された焼酎専門の蔵元です。設立には、清酒蔵として知られる「井上合名会社」と「山口酒造場」が共同出資しており、清酒文化が根付く筑後平野において、焼酎造りに新たな風を吹き込む存在として誕生しました。筑後川の豊かな水源と肥沃な土地に恵まれたこの地域は、稲作と麦作が盛んなことで知られ、焼酎造りに最適な環境が整っています。

「研醸（株）」の焼酎造りの最大の特徴は、原料と製法への徹底したこだわりです。代表的な取り組みの一つが、焙煎麦を使用した焼酎の開発です。焙煎によって麦の香ばしさと深みを引き出し、さらに「焙煎麦麹」という独自の麹を用いることで、他にはない芳醇な香りと味わいを実現しています。この製法は特許も取得しており、技術的にも高い評価を受けています。

また、「研醸（株）」は人参焼酎のパイオニアでもあります。地元の水田で育てられた人参と清らかな地下水を使い、特許を取得した製法で造られる人参焼酎「珍（めずらし）」（※）は、焼酎の新たな可能性を示すユニークな商品として注目を集めました。こうした挑戦的な姿勢は、焼酎業界の中でも異彩を放っています。

蔵元としての規模は小さいながらも、年間約1,300石の製造量を誇り、従業員一人ひとりが丁寧な手仕事で焼酎造りに携わっています。「小さな仕込みが生む独自の味」をモットーに、量産ではなく品質を重視した酒造りを続けており、焼酎ファンからの信頼も厚いです。

さらに、福岡県特産焼酎組合にも加盟しており、県内の酒造メーカーとともに「古久蔵」という共同貯蔵庫（※）を活用した長期熟成焼酎の開発にも取り組んでいます。トンネル内で5年以上熟成された麦焼酎は、「古久」ブランドとして販売され、各蔵元の個性が表現された逸品として人気を博しています。

このように、「研醸（株）」は地域の風土を活かしながら、独自の技術と発想で焼酎造りに革新をもたらしてきました。伝統と挑戦を融合させたその姿勢は、今後も多くの人々に愛され続ける焼酎を生み出していくことでしょう。