「株式会社北鹿（ほくしか）」は、秋田県大館市に本社を構える酒造会社で、1944年（昭和19年）に政府の企業整備により、北秋田郡と鹿角郡の21業者8工場が合同して設立されました。社名の「北鹿」は、両郡の頭文字「北」と「鹿」を組み合わせたもので、北の野生鹿が躍り出る勢いにあやかりたいという願いが込められています。

創業以来、「北鹿」は秋田県北部の穀倉地帯である大館市の自然環境を活かし、酒造りに取り組んできました。この地域は、世界遺産の白神山地や奥羽山脈、十和田湖、八幡平などの雄大な自然に囲まれ、清らかな伏流水と良質な酒米に恵まれています。こうした自然の恵みを最大限に活かすことで、北鹿の酒は「香り高く、味わい深い」ものとして高い評価を得ています。

「北鹿」の酒造りの特徴のひとつが、「秋田流生酛（きもと）仕込み（※）」です。これは江戸時代から続く伝統的な生酛造りを現代的に改良したもので、自然の乳酸菌を活用しながら、撹拌機を用いて米をすりつぶすことで、蔵人の負担を軽減しつつも、深いコクと奥行きのある味わいを実現しています。時間と手間はかかりますが、北鹿ではこの製法にこだわり続けています。

さらに、「北鹿」は豪雪地帯という地の利を活かし、「雪中貯蔵」という独自の熟成方法も採用しています。これは冬季に雪の中で酒を貯蔵することで、温度が安定し、酒がゆっくりと熟成されるというもの。結果として、まろやかでキメ細やかな味わいが生まれ、季節限定酒として人気を集めています。

「北鹿」はこれまでに全国新酒鑑評会で16回の金賞を受賞し、東北清酒鑑評会でも11年連続で優等賞を獲得するなど、その技術力と品質は折り紙付きです。代表銘柄には「北秋田」シリーズがあり、特に「北秋田 大吟醸」は、華やかな香りとすっきりした味わいで、食中酒としても高く評価（※2）されています。

地域に根ざした酒造りを大切にしながら、伝統と革新を融合させた北鹿の日本酒は、秋田の風土と職人の技が詰まった逸品として、今も多くの人々に愛され続けています。